大谷翔平がマウンドに復帰し、ドジャースは二刀流でのプレー復帰を注視している

ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が、2025年6月16日のサンディエゴ・パドレス戦で、約1年10か月ぶりにメジャーリーグのマウンドに復帰した。この試合は、2023年8月23日のシンシナティ・レッズ戦以来、663日ぶりの投手登板となり、ドジャース移籍後初の「二刀流」での出場となった。大谷は「1番・投手兼指名打者」として先発し、投手としては1回を投げ、28球で2安打1失点を記録。最速161.2キロのストレートをマークするなど、力強い投球を見せた。一方、打者としては4打数2安打2打点の活躍で、3回に同点の適時二塁打、4回に追加点となる右前適時打を放ち、チームの6対3の勝利に大きく貢献した。この復帰戦は、ドジャースタジアムに集まった5万3027人のファンから大歓声に包まれ、大谷の二刀流復活への第一歩を印象づけた。
大谷の投手復帰は、2023年9月に受けた右肘の2度目の靭帯修復手術からの長いリハビリを経て実現した。2024年シーズンは打者に専念し、史上初の「50本塁打・50盗塁」を達成、ナショナルリーグのMVPを2年連続3度目の受賞、さらにはワールドシリーズ制覇に貢献するなど、圧倒的な活躍を見せた。しかし、投手としての復帰は慎重に進められ、当初は7月のオールスターゲーム後の復帰が予想されていた。それが前倒しされた背景には、ドジャースの投手陣の苦境がある。チームは先発投手を中心に故障者が続出し、14人の投手が故障者リストに名を連ねるなど、厳しい状況に直面していた。大谷の早期復帰は、こうしたチーム事情と本人の強い意欲が合致した結果と言える。

ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、復帰戦後の記者会見で「彼の球数は30球が上限だった。次の登板は6日から8日間隔で、1イニングか2イニングになるだろう」と語り、大谷の登板ペースを慎重に管理する方針を示した。実際、大谷は中5日後の6月22日、ワシントン・ナショナルズ戦で2度目の登板を果たした。この試合では1回を無失点に抑え、復帰後初の奪三振を記録。打者としては8回に今季26号となる2ランホームランを放ち、投打での活躍が際立った。試合後、ロバーツ監督は「彼の投球はかなり良かった」と手応えを語りつつ、次回の登板については未定とし、コンディションを見極める姿勢を強調した。
大谷の二刀流復帰には、チーム内外から高い期待が寄せられている。捕手のウィル・スミスは「彼がマウンドに立つ姿は特別だった。次はもっと強くなるだろう」と称賛し、チームメイトのマックス・マンシーは「投げた後にすぐ打席に向かう姿を見て、本当にすごいと感じた」と驚嘆した。一方で、米メディアや識者の間では、怪我のリスクに対する懸念も根強い。2023年のエンジェルス時代、過度な負担が右肘の靭帯損傷につながった教訓から、ドジャースは大谷の起用法を慎重に検討している。特に、ポストシーズンでの二刀流の活躍を見据え、疲労管理が重要な課題となっている。
大谷自身は、復帰戦後のインタビューで「チームの負担を少しでも減らせれば」と語り、投手としての役割を意識している。実戦登板を通じて徐々にイニングを伸ばし、状態を上げていくという異例の調整法を選択した背景には、ライブでの投球練習が体に負担をかけるよりも、試合で実戦感覚を取り戻す方が合理的との判断があった。6月10日の実戦形式練習では44球を投げ、順調な回復ぶりを見せていたが、本人は「メジャーで投げる準備ができた」と首脳陣に伝え、早期復帰を強く望んだ。
大谷の二刀流復帰は、ドジャースのワールドシリーズ2連覇に向けた戦略にも大きな影響を与える。投手陣の負担軽減だけでなく、打者としての圧倒的な存在感と相まって、チームの戦術に柔軟性をもたらす。米メディアは「大谷の復帰はドジャースにとって勝利そのもの」と評し、彼の特別な才能を再認識している。今後、大谷がどのように二刀流を進化させ、チームを牽引していくのか、野球ファンの注目はさらに高まるだろう。