ドジャース、大谷翔平の投手育成で「不必要なリスク」を回避

ドジャース、大谷翔平の投手育成で「不必要なリスク」を回避

ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が、2025年シーズンに投打の二刀流として鮮烈な復帰を果たしている。2023年8月以来、約1年10カ月ぶりにマウンドに立った彼は、右肘手術からの回復を経て、投手としての再起を強く印象づけた。しかし、ドジャースは大谷選手の投手としての起用において、「不必要なリスク」を避ける慎重な戦略を採用している。このアプローチは、彼の長期的な健康とチームのポストシーズンでの成功を見据えたものだ。

大谷選手は6月16日(日本時間17日)のパドレス戦で投手復帰を果たし、1回を28球、2安打1失点で終えた。この試合では最速161.2キロのストレートを記録し、バッターとしても2本のタイムリーヒットを放つなど、二刀流の可能性を改めて示した。続く6月29日のロイヤルズ戦では、2イニングを無失点に抑え、自己最速となる163.6キロをマーク。さらに、7月5日のアストロズ戦では31歳の誕生日を記念する登板で、2回を1安打無失点、3奪三振と圧巻の投球を見せた。これらの登板は、彼が投手としての感覚を取り戻しつつあることを証明している。

ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は、大谷選手の投手起用について明確な方針を示している。「次は2~3イニング。9月前に5イニングは投げない」と述べ、段階的な登板計画を強調した。この戦略は、大谷選手の肘への負担を最小限に抑え、疲労の蓄積を防ぐことを目的としている。2023年、エンジェルス時代に過度な登板が右肘の靭帯損傷につながった教訓を活かし、ドジャースは短期的な成果よりも長期的な安定を優先している。ロバーツ監督は「実戦形式の投球練習を続けるよりも、試合で短いイニングを投げる方が合理的」と説明し、大谷選手自身もこの方針に同意している。

チームの投手事情も、この慎重なアプローチを後押ししている。ドジャースは今シーズン、先発投手陣の離脱が相次ぎ、14人もの投手が故障者リストに名を連ねる厳しい状況に直面した。こうした背景から、大谷選手の投手復帰は、チームのブルペンの負担を軽減する重要な一手となっている。しかし、焦ってイニング数を増やすことは、さらなる怪我のリスクを高める可能性がある。ロバーツ監督は「彼の体調管理が最優先。ポストシーズンでの活躍を見据え、慎重に進めていく」と語る。

大谷選手自身も、投手としての復帰に強い意欲を見せている。ロイヤルズ戦後のコメントでは、「積極的にゾーンを攻められたのは良かった」と振り返り、試合を通じて状態を上げていく意気込みを示した。一方で、打者としての負担も考慮し、「投げた後にバッターとして試合に出続けるのは体への負担が大きい」と指摘。このため、ドジャースは彼の登板間隔を6~8日に設定し、回復時間を確保している。

米メディアも大谷選手の復帰に注目し、その意義を高く評価している。スポーツ・イラストレイテッドは「ショウヘイ・オオタニがマウンドに戻っただけで、ドジャースにとっては勝利」と報じ、AP通信は「彼がマウンドに上がれるだけでローテーションの強化になる」と伝えた。一方で、元メジャーリーガーのA・ロッド氏など一部からは「今季は無理をせず、打者に専念すべき」との慎重論も上がっている。これに対し、ロバーツ監督は「大谷の二刀流は唯一無二。彼の挑戦を支えるのが我々の仕事だ」と反論し、チームのサポート体制を強調した。

ファンの期待も高まる中、大谷選手の投手復帰はまだ始まったばかりだ。ドジャースは彼の健康を第一に考え、ポストシーズンでの最高のパフォーマンスを引き出すために、無理のないペースで育成を進めている。「不必要なリスク」を避けながら、大谷選手が再びメジャーの舞台で二刀流の歴史を刻む日が待ち遠しい。

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