2025年5月4日、ロサンゼルス・ドジャースは投手陣の負傷者増加という危機に直面している。サイ・ヤング賞受賞者のブレイク・スネルが左肩の炎症で15日間の負傷者リスト入りし、タイラー・グラスノーも足のけいれんで緊急降板。さらに、先発ローテーションの要であるクレイトン・カーショーも復帰が遅れるなど、チームの投手陣は深刻な状況にある。この危機の中、デーブ・ロバーツ監督は大谷翔平の投手としての早期復帰を強く望んでいるが、大谷の反応は予想外だった。

ドジャースは開幕から好調を維持し、ナショナルリーグ西地区で首位を走っている。大谷は打者として打率.310、8本塁打、20打点を記録し、チームの攻撃を牽引。4月28日のマーリンズ戦では、初回に右前打を放ち二盗を決めるなど、4出塁で存在感を示した。しかし、投手としての復帰は慎重に進められており、右肘手術からのリハビリはシーズン終盤を見据えたペースで行われている。ロバーツ監督は、チームの投手不足を補うため、大谷の二刀流復帰を早めることを期待していた。
この日、試合前のミーティングで、ロバーツ監督は大谷に投手復帰の可能性について直接尋ねた。監督は「ショーヘイ、チームには今、君の投手としての力が必要だ。ブルペンでの調整を加速できないか?」と提案。報道によると、監督は大谷がポストシーズンでの投手復帰を目指すプランを前倒しし、シーズン中盤での登板を視野に入れることを望んでいた。しかし、大谷の返答は監督を驚かせた。彼は静かに、だが力強くこう言った。「私の体はまだ準備ができていない。」

この6つの言葉は、部屋にいたコーチ陣やスタッフに衝撃を与えた。大谷は普段、チームの要望に対して柔軟に応じる姿勢を見せるが、今回は自身のリハビリのペースを守る決意を明確に示した。あるチーム関係者は「ショーヘイがこんなにハッキリと自分の意見を言うのは珍しい。彼は自分の体を誰よりも理解している」と語った。大谷のこの発言は、彼が無理な復帰で再び怪我をするリスクを避け、長期的なキャリアを優先していることを示唆している。

ロバーツ監督は大谷の言葉を受け入れざるを得なかった。監督は試合後の記者会見で、「ショーヘイの健康が最優先だ。彼が準備ができていないと言うなら、それを尊重する。シーズン終盤に最高の状態で投げられるよう、焦らず進める」とコメント。過去にも大谷の投手復帰について「最も大事なのはシーズン終盤」と語っており、今回はチームの危機にもかかわらず、大谷の判断を支持する姿勢を見せた。
ドジャースの投手陣の状況は依然として厳しい。スネルとグラスノーの離脱に加え、抑えのマイケル・コーペックやエバン・フィリップスもフル稼働できていない。ロバーツ監督は新加入のタナー・スコットをクローザーとして起用するなど、ブルペンのやり繰りに追われている。ファンやメディアからは「大谷の投手復帰がなければポストシーズンは厳しい」との声も上がるが、チームは大谷の打撃と山本由伸や佐々木朗希の先発陣で現状を乗り切るしかない。
大谷自身は投手復帰への意欲を失っていない。4月24日には35球のブルペン投球を行い、球速も上昇。スライダーの使用は医療的判断で制限されているが、クイック動作の練習も開始している。ロバーツ監督は「彼の二刀流への情熱は本物だ。まるでオールスター選手が2人いるようなもの」と大谷の才能を称賛しつつ、復帰はオールスター後になるとの見通しを示した。
大谷の「私の体はまだ準備ができていない」という言葉は、彼のプロフェッショナリズムと自己管理の徹底を象徴している。ドジャースはワールドシリーズ連覇を目指す重要なシーズンだが、大谷は短期的なチームのニーズよりも、自身の体とキャリアの持続可能性を優先した。この決断が、チームと大谷の未来にどのような影響を与えるのか、引き続き注目が集まる。